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認定医が語る、歯を削らない治療の落とし穴

一般歯科  / 審美歯科

「歯を削らない治療」への妄信

最近「歯を削らない治療」がいい治療!と妄信的に思い込んでいる患者様、歯科医師が増えたことに呆れている。

今回は「歯を削らない治療」を妄信し、見過ごされている問題点にあえて触れていこうと思う。

まず前提として、「歯を削らない治療」とは虫歯治療においてなるべく歯を削らないようにすることを心がけましょうという考え方が発端であった。そこから歯は削ったら戻ってこないのだから歯は削らない方がいい!と発展してきた。

結論を先に言うと私は「歯を削らない治療」は再発のリスクが非常に高く、反対である

自分は研修医修了後から2025年現在までずっと日本大学松戸歯学部保存修復科に在籍している。
保存修復科とはまさに虫歯治療のど真ん中であり、歯医者の中でも虫歯治療に特化している。

そこで特に大事にされていたことは「歯を必要最小限しか削らない治療方針」である。
自分はこの治療方針について賛成だし治療もこれをいかに実践できるかを常に心がけている。

ここで一見矛盾しているようにお思いになった方も多いだろう。
一度、整理させてほしい。

・歯を削らない治療➡反対
・歯を「必要最小限しか」削らない治療➡賛成

この2つは似ているようで全く異なるのである。

冒頭で最近「歯を削らない治療」がいい治療!と妄信的に思い込んでいる患者様、歯科医師が増えたことに呆れている。と述べたが正確には言い直すとするならばこうなる。

最近、「歯を削らない治療」と「歯を必要最小限しか削らない治療」を混同している患者様と歯科医師が増えたことに呆れている。

例え話をしよう。

あなたが胃癌になってしまったと仮定する。
勇気を振り絞って手術を受けて目を覚ましたところ、あなたに向かって主治医はこういうのだ。

「ぼくは胃をなるべく切りとらない治療が良い治療だと思ってるんだ。胃を切っちゃうと戻ってこないからね!今回もちょっとしか切ってないよ!ただちょっとしか切ってないから癌も取り残してるかもしれないけどね!」


(この医者は何を馬鹿なことを言ってるんだ?)


あなたはこう思ったのではないだろうか?

癌という絶対に取り除くべき必要最小限の切除ができておらず、それで胃を切り取る量が減ったことが良い治療なのだろうか?これでは癌の再発を許してしまい本末転倒に違いないのだ。

しかし、残念ながら歯科ではこの馬鹿なたとえ話と似たようなことが現実に起きているのだ。
歯を削らないことが正義だと妄信し、削るべき虫歯を取り残す歯科医師が後を絶たないのである。

そして虫歯の再発を許し、歯の神経にまで虫歯菌の侵入を許してしまっているのだ。
虫歯という必要最小限の除去という前提があるからこそ、歯を削らない治療は意味がある。

この前提を理解せず「歯を削らない治療」を妄信するのは今日限りでやめていただきたい。
当院ではすべての歯科医師が虫歯を確実に除去し、それ以外の健康な歯をなるべく残すような治療を心がけている。

ちなみに虫歯を削らなくても薬を塗るだけで治る(3-mix法など)という治療を保険外で勧める歯科医院も巷にはあるようだがこのような治療は医学的根拠がない。きちんと論文等に目を通して医学の発展に追随している歯科医師ならまず行わないだろう。

このような治療を勧めた時点で「私は医学的な知識がない恥ずかしい歯科医師です」と自己紹介しているようなものだ。自分はきちんと医学的な根拠を持って説明できる歯科医師でありたいと常々思っている。

【執筆者紹介】
・副院長:植竹貴弘
・栃木県栃木市出身
日本大学松戸歯学部総合診療科にてマウスピースを専門的に学び、プロスポーツ選手などの診療に携わる。
同じく保存修復科にて歯を抜かない治療(歯科保存治療)を学び、栃木市で唯一の認定医となる。
日々の診療の傍ら、歯科大学において歯科医師を目指す学生や研修医への指導も行っている。
インプラントについては口腔インプラント学会とインプラント再建歯学会に在籍し、日々研鑽を積んでいる。
※3-mixなどの治療の医学的根拠のなさについての詳細はコチラ
※当院の虫歯治療への取り組みの詳細はコチラ
栃木県栃木市で治療をご検討中の方はぜひ植竹歯科医院へご相談ください。

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